酸性雨やPM2.5でハゲるという噂は本当か
誰もが聞き覚えのある酸性雨でハゲる説
「酸性雨に頭が濡れるとハゲるよ」
ハゲを意識しなかった子供の頃からこんな話はよく耳にし、大人になった今でも傘がない状態で雨が降ってくると「髪の毛大丈夫かな」と心配になることがあります。
しかしよくよく考えてみると「酸性雨」というものが具体的にどんなものなのか分かっていませんし、実際に酸性雨で薄毛になったという話も聞きません。
そんな、なんとなく眉唾だけど、なんとなく気にしてしまう“酸性雨でハゲる説”について詳しく調べてみましたので興味がある方は読んでみて下さい。
酸性雨とは
酸性雨とは人間の活動によって生じたものや自然界に元々ある二酸化硫黄や窒素酸化物といった酸性の物質が雨に吸収され地上に降ったものを指します。
酸性やアルカリ性というのはpH(ペーハー)で示され、中性のpH7を基準とし酸性に傾けば数字が減り、アルカリ性に傾けば数字が増えていくことになり、酸性雨の目安というのは大気中の二酸化炭素が十分溶け込んだ場合のpHが5.6になるようです。
日本で降る雨の全国的な平均pHは4.6~4.8くらいとなっており、日本の雨は明らかな酸性雨であることがわかります。
ちなみにこの酸性雨、降り始めは大気中の酸性物質を拾うため酸性が強く、時間と共に酸性が薄まってくる特徴があります。
補足ですが、ネットを調べると株式会社ウェザーニューズの調査では全国平均がpH5.7くらいとなっていますが、これはpH試験紙を使った簡易の調査で、国や自治体が行っている調査では平均pHは4.6~4.8となっています。
■酸性雨と呼ばれる基準はpH5.6に対し日本の雨は平均pH4.6~4.8と酸性雨
酸性の度合いは長年変わっていない
そもそも日本では「酸性雨」って言葉をあまり耳にしなくなりましたよね。
今の日本の空気は環境基準が厳しくなっていることもあって世界的に見ても非常にクリーンで、排ガスや工場からの煙などで汚染されていた高度成長期に比べれば雨の酸性度は減り、それが「酸性雨」という言葉を聞かなくなった理由と感じるかもしれません。
しかし、実は雨の酸性度というのはここ40年ほとんど変わっていないんですよね。
上図は気象庁による観測データで、青線の綾里や岩手県大船渡市の、南鳥島は東京都小笠原村の観測所を指します。
下に行くほど雨の酸性度が高いことを示し、東京都の南南東約1000kmの海上にある小笠原村は、人の手があまり入っていない土地とあって酸性度が弱いことが見て取れます。
一方、綾里では1976年から酸性度はほとんど変わっていません。このことから、酸性雨に薄毛を引き起こす作用があるとすれば、現代でも十分脅威になりうることを意味します。
酸性雨という言葉を聞かなくなったのは、酸性度が弱まったからではなく、ただ単に注目されなくなったからと見るべきか。
酸性雨に髪や頭皮が濡れるとハゲるのか?
人間の肌のpHは個人差や部位による違いはあるもののおよそ4.5~6の弱酸性で、一方の日本の酸性雨はpH4.6~4.8ですから肌と雨の酸性に大きな差異はありません。
そのため「酸性雨でハゲる」という話を聞いたときにイメージする「強い酸性で髪や頭皮に悪影響がある」ということはほとんど考えられないといって差し支えないでしょう。
とはいえ、酸性雨がコンクリートや金属などを腐食させることは間違いなく、またもう少し強い酸性雨が降る国などでは植物にも悪影響を与えていることもあって「酸性雨=悪=ハゲる」というデマが広がったのだと思います。
ただ、酸性雨に含まれる二酸化硫黄や窒素酸化物が頭皮や髪に影響を与えないとは言い切れず、また雨に濡れたまま帽子やヘルメットをかぶるようなことがあると一気に雑菌が繁殖し頭皮に悪影響を与える可能性も考えられます。
それらを総合的に勘案し、酸性雨で薄毛になるということはないが、濡れないに越したことはないというのが結論になるでしょうか。
酸性雨より怖い汚染物質を含んだ雨
雨の酸性度に関しては薄毛を引き起すリスクはほとんどないと言ってもいいでしょう。しかし、雨を浴びるリスクは酸性度だけに留まるわけではありません。
近年は中国から飛来するPM2.5による健康被害が懸念されていますし、さらに粒子が小さいPM0.5なんて存在も。
PM2.5は2.5μm以下の細かな粒子を指し、PM0.5は同様に0.5μm以下の粒子を指します。特定の物質を指す言葉ではなく、あくまでも粒子の大きさによって判断されるため、硫酸炎や硝酸塩、アルミニウム、アンモニウム、ナトリウムなど様々な成分が含まれています。
雨が降ればこれらを含んで頭皮に降り注ぐことが予想され、様々な汚染物質が含まれているという点から髪の毛にどういった影響が出るのか分からないあたり、怖いものを感じる。
政府の見解ではPM2.5による健康被害は、呼吸器系の疾患や肺がんのリスクが高まる可能性とされていますが、現実的には肌への影響も取りざたされていて、炎症を起こし抜け毛の要因になる可能性も。
PM2.5が男性型脱毛症(AGA)や薄毛の直接的な原因になることはないでしょうが、間接的には影響を与える可能性も否定できません。もしかしたら酸性雨よりPM2.5などの汚染物質に気を使った方がいいのかも。
降り始めの雨は浴びない配慮を
酸性雨やPM2.5を含んだ雨が薄毛に影響を与える可能性は低いものの、それを浴びてマイナスになることはあってもプラスになることは絶対にありませんので、できる限り雨に当たらない工夫をしたいところ。
特に降り始めの雨は空気中の酸性物質や汚染物質を取り込むという特徴があるので、「雨が降ってきたな」と感じたらすぐに傘をさしたり避難したりしたいところ。
もしどうしても雨に濡れてしまう場合は帰宅後すぐにお風呂に入るなど、できるだけ早期に洗い流すようにしましょう。
基本的に酸性雨やPM2.5などの汚染物質が直接薄毛を引き起こすことはないため過度に恐れる必要はありませんが、浴びないに越したことはないのも確か。
薄毛になってから「もしや頻繁に雨を浴びていたからか!?」と後悔したくもありませんので、一応頭の片隅に入れておいた方が良いでしょう。
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