ヒゲや体毛が濃い人はハゲるという噂を検証
年齢を重ねるごとにじわじわとヒゲが濃くなってくるのに、髪の毛は徐々に薄くなってきている…そう感じたことはありませんか?これは気のせいなのか?それとも何かしらの関係があるのか?
「若い頃に比べヒゲや体毛は明らかに太さを増し剛毛になってきているのに髪の毛は痩せ細る一方」
これは私自身が痛感している事実であり、同様の話は周囲でも嫌というほど耳にします。実際「それ俺もだわ…」という人も多いのではないでしょうか?
「体毛やヒゲが濃い人はハゲる」なんて説がまことしやかに語られてはいるものの、若い頃は髪の毛にまつわる都市伝説のひとつだと思っていました。しかし年を重ねるにつれ都市伝説ではない気も…
そんな髪の毛とヒゲ、体毛の関係に切り込んでみたいと思います。
ヒゲや体毛が濃いとハゲるという根拠
薄毛…とりわけ男性であればその9割が男性型脱毛症(AGA)で、こいつの原因は男性ホルモンであるテストステロンに5αリダクターゼという酵素が働きかけて生成されるジヒドロテストステロン(DHT)です。
このDHTはテストステロンと同様に男性ホルモンの一種で、胎児や子供の性器の成長に加え、性欲や体毛の成長にも影響しているとされています。
つまり、薄毛の原因DHTが増えれば体毛は濃くなるということ。
「という事は、やっぱりヒゲや体毛の濃さと薄毛は反比例するんだな」
…そう感じた人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。体毛やヒゲにはテストステロンも大きな影響を与えており、体毛やヒゲが濃いからといって薄毛になるとは言い切れないのです。
テストステロンでハゲることはない
男性ホルモンの大半を占めているのが「テストステロン」で、これは幼少期から思春期、青年期~壮年期に至るまで、筋肉の発達やヒゲ・体毛の成長、丈夫な骨格の生成など男らしい体を作る上で絶対に欠かせないホルモン。
このテストステロンは男性であれば豊富に分泌されているものですし、薄毛を引き起こすDHTの前身ということもあり「こいつもハゲの一因か?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。
むしろテストステロンは男らしい剛毛な髪の毛を作り出すとも言われており、薄毛とテストステロンに直接的な関係はないというのが標準的な考え方になってきています。
テストステロンはDHTの前身という事実から「テストステロンの量と比例してDHTが多くなる」と勘違いされている人も多いものの、これも間違い。
AGAの原因となるDHTは5αリダクターゼと結びついて生まれるもの。
極端な例を挙げると、テストステロンの分泌が非常に多く、体毛・ヒゲもっさもさでも、5αリダクターゼが分泌されなければDHTが作られることもなく、当然薄毛になることもありません。
逆に、テストステロンの分泌が男性の平均より少なくても、5αリダクターゼの分泌や毛乳頭細胞にあるDHT受容体(アンドロゲンレセプター)の感受性が高ければ薄毛になることになります。
- ■ヒゲや体毛が濃いのに髪の毛フサフサの人
- ■ヒゲや体毛が薄いのにハゲている人
こういったケースが散見される理由はひとえに5αリダクターゼとアンドロゲンレセプターの働きであり、テストステロンの量と薄毛に直接的な関係はないのです。
ここで原点に立ち返り「体毛やヒゲの濃さと薄毛は反比例する?」を思い返してみましょう。体毛やヒゲが徐々に濃くなっている一方で薄毛が進行するということは、テストステロンではなくDHTが増えていると見るのが自然。
ここには男性の加齢に伴う変化も影響しているのです。
テストステロンは年々減少する
男らしい体を作る男性ホルモンの象徴でもあるテストステロンですが、このホルモンは20代をピークに減少に転じます。
テストステロンが20代から減少しだすのに、ヒゲや体毛は30代40代になっても太く、濃くなり続ける…そうなればやっぱりDHTが増えていると考えるのが妥当ですよねぇ…
DHTを作り出す5αリダクターゼの分泌量やDHTの感受性を左右するアンドロゲンレセプターは遺伝によって概ね決まっているとされるため、年を取ることでDHTが極端に増えることは考えづらいのですが、そこにはテストステロンの減少が関わっているとの説も。
男性らしさを作り出すテストステロンが減少しだすと、体内ではそれに代わるホルモンを作り出そうと作用が働きDHTを増やすという見方があり、これなら年と共に体毛やヒゲが濃くなる一方で髪の毛が薄くなっていくのも説明が付く。
テストステロンの減少に伴ってDHTが徐々に増えるという説は信憑性が高そう。
DHTが増えたからといって薄毛になるとは限らない
ただし、年々ヒゲや体毛が濃くなっている原因がDHTの増加にあるとしても、それが必ずしもAGAを引き起こすとは限らない点に注意。
ヒゲや体毛が濃くなったといっても、そのスタート地点は千差万別で、元々口の周りと顎に申し訳程度のヒゲが生えているレベルの人もいれば、顎からもみあげにかけてびっしりと剛毛が生えている人もいる。
体毛にしてもスネ毛すらほとんど生えていない人もいれば、ジャングルのようなスネ毛や腕毛に加え胸毛もガッツリな人もいる。
髪の毛も同様で状況は人によって大きく異なるのです。
上でも書きましたが、5αリダクターゼの働きがどんなに活発でも、DHTの量がどんなに多くても、それを受ける毛乳頭細胞内の受容体が機能していなければ薄毛になることはなく、逆に髪の毛のDHT受容体の数が多かったり感受性が高かったりすれば、5αリダクターゼやDHTが少なくてもハゲる可能性は十分にあります。
体毛やヒゲが濃いのにハゲない人、体毛やヒゲが薄いのにハゲる人がいるのはそのためと推測されます。
男性の頭頂部や生え際以外の毛はテストステロンやDHTの影響をダイレクトに受け濃くなるものの、頭頂部や生え際の毛だけはDHTの影響で薄くなってしまい、それを左右するのがDHTの受容体という結論になりますか。
ヒゲや体毛と髪の毛の濃さは反比例?のまとめ
年と共にテストステロンの分泌量が減り、それを補うためにDHTが増えるため、ヒゲや体毛が濃くなる一方で髪の毛は薄くなるという現象が起きるというのは一定の説得力があります。
ただし、これは明確なデータが示されているわけではなく、また個人差も大きいことが予想されるため想像の域を出ないというのが現実的な見方か。
また、薄毛でなくても髪の毛というのは加齢によって徐々に細くなりコシやハリが無くなっていくものなので、これをDHTの影響と考えるのはやや早計です。
とはいえ、ヒゲや体毛が濃くなるにつれ髪の毛が薄くなっていると感じている人が私を含め多数に上るもの確かなんですよね…
単純にDHTの量が増えているのではなく、髪を男性らしい剛毛にする作用があるテストステロンが減少することによって相対的にDHTの割合が増え、それが体毛や髪の毛に影響を与えている可能性も考えられるかと。
ひとつ確かなのは、薄毛になってしまっている以上、体内でテストステロンやDHTがどう影響していようが、何らかの対策を行わなければハゲる一方だということ。
ホルモンという人間の成長の根幹にかかわるものが影響している以上、育毛剤や発毛剤など強力な力で立ち向かわなければならないのは想像に難くありません。
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