京セラ、資生堂の再生医療、実用化時期と費用は?
山中伸弥氏がiPS細胞を開発しノーベル賞を受賞した事は記憶に新しいですが、この技術を応用し資生堂がカナダのベンチャー企業と提携し、毛髪の再生に向け本格的な研究を行っています。
この技術では毛根すら失ってしまった重度の薄毛の方でも効果があるという。
原理はヒトiPS細胞とマウスの細胞を用い毛髪の根本にある毛包を再現し、これを頭皮に移植する事ですでに髪を作る能力を失ってしまった方でも再び髪が生えるというもの。
しかしこの技術ではまだ産毛程度の髪しか生えず未完成な上に現在これを行おうとすれば1本につき100万円ほどかかるらしく、iPS細胞を使っ他毛髪再生医療の実用化にはまだまだ時間がかかりそうと見られていました。
しかし髪の毛の再生医療には様々なアプローチが存在し、毛包を体外で増やして移植する技術は2018年7月には安全性を確認する動物実験が始まるなど、実用化が現実味を帯びてきました。
進歩を続ける髪の毛の再生医療がどういったもので、実現にどのくらいの期間が必要なのか、そして予想される費用について考えてみます。
毛球部毛根鞘細胞の培養による発毛は実現間近
現在の技術では1から毛根を作るのは現状厳しいものの、残っている髪の毛から特定の細胞を取り出し培養する事による発毛技術は確立されてきています。
中でも注目なのが資生堂が着手している毛髪再生医療で、毛球部毛根鞘細胞を培養し頭皮に注射する事によって髪の毛を再び生える状態にするという研究が行われています。
これは自分の頭皮を直径5ミリ程度切り取り、そこから毛球部毛根鞘細胞を取り出して培養、それを脱毛した頭皮に注射し戻すことによって毛乳頭細胞が活性化され再び髪が生えるというものです。
今までの後頭部から自分の毛を移植する植毛と比べ体への負担も小さく、また施術する医師の技量に左右されていた植毛に対し細胞を培養して頭皮に注射するだけなので医師の腕に左右されないというのも大きなメリットとなるようです。
自分の細胞を使うためアレルギーや拒絶反応といった問題も起きにくいのも特徴。
これはプロペシアを使えない女性にも適用できるため男性に比べ薄毛治療の選択肢が少ない女性にとっても朗報となりそうです。
京セラの毛髪再生医療
毛髪の再生医療に力を入れている資生堂に対し、京セラも負けてはいません。
京セラは国立研究開発法人理化学研究所や株式会社オーガンテクノロジーズらと毛包器官の再生による脱毛症治療の共同研究を行っています。
どういったものかというと、薄毛の人の後頭部など健康な髪の毛が生えている部位から毛根部分を包んでいる「毛包」ごと少量摂取し、そこから上皮性幹細胞と間葉性幹細胞に分離。その後毛包原基を再生しそれを大量生産し薄毛になった部分に移植するというもの。
毛のないマウスに移植した試験では毛の再生が確認されており、その後正常なヘアサイクルを繰り返すことも分かっています。これが実現できれば資生堂の研究同様体への負担の少ない薄毛治療が可能になりそうです。
実際マウスの実験では1平方センチメートルあたり124本の毛が生えたことが確認。人間の髪の毛は1平方センチメートル当たり約150本ですので、これが実現すれば薄毛の悩みはなくなるかもしれません。
気になる実現の時期についてですが、現状では2020年の実用化を目指しいているとのこと。京セラというと携帯電話のイメージを持っている人も多いと思いますが、こういった研究も行っているんですね。
ハゲは金になるということか…
毛髪再生医療の費用と実用化される時期
髪の毛の再生医療は確実に進歩しており、遠からず実現すると見られています。いつ実用化され、そして費用はどの程度のなるのかという点は非常に気になるところでしょう。
資生堂の研究に関してはすでにかなり進んでおりすでに人を対象にした治験に入っています。そこで順調に成果が出れば2018年には実用化されるとの事です。
※2018年現在実用化の具体的なスケジュールは公表されておらず、2020年ごろまでずれ込むと予想されています。
ただ、6ヶ月間行われた時点で髪の毛の密度が5%以上増えた被験者は16人中10人という結果に。一定の効果は認められたが劇的とは言えない…といったところか。
気になる費用は現在行われている自毛植毛と勝負できる価格にしたいという事なので、自毛植毛が100~200万円くらいかかる事を考えると、まあこのくらいの費用になるのではないかと見られています。
決して安くはない費用ですが、もしこれによって劇的に髪が生えてくるとなれば希望者は殺到する事でしょう。ただ前述のように現段階では劇的な効果が出ていないため、費用対効果は微妙なところかもしれません。
【追記】京セラの技術は2020年以降の実用化
髪の毛の再生医療に関して、2018年6月に新たな情報が入ってきました。
髪の毛を生み出す毛包を取り出して体外で増やし移植する技術を開発した理化学研究所は、2018年7月から安全性を確認する動物実験を行うと発表。現在は京セラと共に技術開発を進めているとのこと。
この動物実験は2018年内に終了し、安全性が確認されれば男性型脱毛症(AGA)の人を対象とする臨床研究を行う予定のようです。
気になる実用化は2020年以降とのこと。
この研究では取り出した1個の毛包を100個に増やせるため、後頭部や側頭部から毛包を移植する従来の植毛とは異なり、事実上増やせる数に制限はなくなることに。
これまでの植毛は増やしたい数だけ後頭部などから毛包を抜き取る必要がありましたが、この技術では取り出す毛包の数を最小限に抑えることが可能に。当然ながら体への負担やトラブルを大幅に減らすことができるでしょう。
気になる費用については「自由診療になる」と語るに留まり明言を避けています。
毛包を薄毛部分に植え付ける点においては現在の自毛植毛と同様なので、あとは培養する人件費や技術料がどれほどになるのか…という問題になるでしょうか。
最先端医療という点を考えるに、これが広く普及するまでは自毛植毛より高額になる可能性が高いと見ます。自毛植毛の1.5~2倍くらいと考えるのが妥当か。
「早く実用化してくれないと手遅れになっちゃうよ…」と感じているあなた、諦めずに様々な発毛を実践し、この技術が実際に使えるようになるまで毛根を出来る限り残しておく努力をしておいた方がいいかもしれませんよ。
私も…フィナステリドとチャップアップを続けつつお金を貯めておきます。
最先端医療の薄毛治療も万全ではない点に注意
安全性を確かめる動物実験が始まり、再生医療による薄毛治療が実用化が現実味を帯びてきました。
ただし注意したい点もあります。それは毛包を増殖できるという点において自毛植毛に対し明らかな有意性があるが、植え付けるという点においては何ら変わりないということ。
最先端の技術を用いて毛包を増やしたとしても、最終的には髪の毛が薄くなってしまった部位に植え付けるという原始的な作業で対応するため、自毛植毛と同様に植えた部分以外の薄毛進行は食い止められません。
ということは、完全にハゲあがった状態で施術を行わない限り、数年後には植えた部分外でAGAが進行し植毛部分だけ離れ小島のように残る不自然な状態になってしまうということを意味します。
このあたりの問題は自毛植毛と何ら変わりはないのです。
今回の毛包を培養して増やす技術は、数的な限界を取っ払うこと、体への負担の軽減という点においては優れているものの、しょせんは対症療法。根本的な解決にはなりません。
自毛植毛同様、複数回に分けて追加施術すれば費用が膨大になる点も痛い。
可能であれば5αリダクターゼや毛乳頭細胞内のアンドロゲンレセプターを恒久的に減らすような根本的な治療が確立されてほしいところ。
私が生きているうちは無理かな。
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